ツナグ:想い人の心得

ツナグ:想い人の心得

辻村深月

 

前作のツナグは心に残る一冊であったので、楽しみにして手にとった続編。

使者、歩美は使者隣7年が過ぎ、大学を卒業し社会人2年目を迎えている。

今作冒頭の”プロポーズの心得”では、杏奈という新しく使者として登場してくる。この話が終わる直前まで、今回のツナグは前作とは全く違う登場人物による全く別の話なのかと思ったが、この話は前作がなければ成り立たないエピソードであり、最後にしっかり歩美が登場し、続きを期待させる構成となっていた。

 

プロポーズの心得

歴史研究の心得

母の心得

一人娘の心得

想い人の心得

 

母の心得より心に残った一節。

”母親って、自分の子どものことはなんでも自分に責任があるんじゃないかって、そんな風に思うものなのかな。”

水難事故で幼い娘を亡くした母親、

がんに侵され結婚後間もなく命絶えた娘の母親。

その2人から、理由は別ではあるが、それぞれ娘の死に母そしての責任を問うて自分を責めている。

そんな2人を見て歩美が発した言葉。

今の私の心情そのもの。

就活がうまくいかない長男を見て、私の育て方が悪かったのだと自らを責める日々。

 

今回のキーパーソンは、歩美の仕事の取引先の一人娘奈緒

一人娘の心得では主役であり、

その他の話でも、歩美の仕事絡みの場面でちょこちょこ顔出ししている。

幸せになってほしいな。

 

全編通じて、ストーリーが美しい。

場面場面の背景描写が繊細で、その場面が頭にすっと浮かんでくる。

辻村さんらしい作品だと思う。

 

が、やはり初作ツナグほどのインパクトはなかった。

が、もう一度初作ツナグを読みたくなった。

 

初作ツナグは名作だな、と再認識した。