こどもホスピスの奇跡

こどもホスピスの奇跡:短い人生の「最期」を作る

石井光太

新潮社

 

私には小学校入学を目前に控えた頃に、腎盂炎で他界した従兄弟がいた。

最後にお見舞いに行った時のことを、今でも鮮明に覚えている。

おそらくは、そんな記憶もあって、興味を抱いて手にした1冊であった。

治る見込みのなくなった子供への治療をどうするのか。

1日でも長く生きてほしい両親の願う治療=延命。

それとも、生きている時間をお互いにとって思い出深い時間とするのか。

これは、大人にも共通する課題であるが、この難しい選択ができる年齢に達していない子供についてとなれば、一層難しく、責任が重い問題となる。

著者が取材したTURUMIこどもホスピスは、この難しい課題を形にした日本で最初のホスピスだ。

この日本で最初のホスピスを実現するまでの長い道のりを読むと、この日本において既存ではないものを新しく作り出すことの困難さが残念に思える。人のためになる仕組み作りが、なかなかスムーズには捗らない。その間に、命を落とした青年もいた。久保田鈴之助くん。

素晴らしい青年だったことを忘れたくないので、ここに記しておきたい。

私にはALSで他界した叔父もいる。

生前より人工呼吸器の装着を拒否していたので、生命の選択を自ら行った患者であったといえよう。私の母などは、”本人がたとえそう言っていたとしても・・・”とその決断に不満そうであったが、私は本人の選択を尊重すべきであったと思う。

最期の時を選択できるようになった今。

一昔前にはなかった命懸けの悩みが、患者の弱った精神に迫られている。

辛い・・・。